危機管理とコミュニケーション戦略は、企業の成長と存続にとって不可欠な要素です。特にインフルエンサーマーケティングの増加とともに、これらの要素はますます重要になってきました。今回は、最近海外で起きたビオレの事例をサンプルに、インフルエンサーマーケティングの落とし穴について解説したいと思います。
Bioréの事件の詳細と影響
国際的なスキンケアブランドのビオレは、スポンサーをしているインフルエンサーの投稿が炎上する事態が発生しました。
ミシガン州立大学の卒業生であるマックス・ブラウン氏が、同大学キャンパスで起きた銃乱射事件と自身のメンタルヘルス、ビオレとの関連についてTikTokに投稿しました。
ニューヨークタイムス紙の報道によれば、この投稿が非難の対象となり、多くの視聴者から無神経だと指摘されました。
銃乱射事件では、単独犯が学生3人を殺害し、5人を負傷させています。報道によるとこの事件により、マックス・ブラウン氏はキャンパス内にいながら不安を抱え、「恐怖」を感じるようになったと伝えています。
ビオレの広報担当者は、このマックス・ブラウン氏の投稿は、メンタルヘルスの啓発キャンペーンの一環で、誰かが彼女に指示したわけではなく「個人的な話」だったと回答しています。
ソーシャルメディアのコメント欄から、銃乱射事件の重い話題に対して「無神経」であると指摘されたことにより、投稿は24時間以内に、削除されました。
ビオレは反響を受けて、公式Instagramで謝罪を行いました。この問題を認めた上で、視聴者にインフルエンサーに怒りを向けないようお願いしました。
"私たちは、より良いガイダンスを提供しなかったことで、インフルエンサーを失望させてしまいました。"と投稿しています。
参照元:Bioré and Influencer Apologize After School Shooting Ad
一連の出来事は、ビオレの評判(レピュテーション)に影響を与えブランドイメージを一時的に揺るがせました。
広報と危機管理の重要性
この事例から、広報活動においての危機管理が企業のレピュテーションや信頼性に直接影響を及ぼすことがわかります。敏感な問題については、特に慎重な取り扱いが求められます。広報担当者は、トピックの選択から表現方法まで、一連のプロセスに深く関与します。危機管理は、発生した問題に対する企業の対応を指します。このケースでは、ビオレの対応は迅速で誠実であったと言えます。問題が発生する前に予防策を講じることが、最も理想的な危機管理のかたちです。
教訓と対策
では私たちはBioréのサンプルから何を学べるのでしょうか。それは「準備」と「予防」です。
1. 事前の準備と対策
インフルエンサーとのコラボレーションを行う際は、彼らがどのようなメッセージを発信するかについて明確なガイドラインを設けることが重要です。また、企業としての価値観や姿勢を明確に伝えることも大切です。
2. 敏感なトピックの取り扱い
敏感なトピック、特に暴力や犯罪、精神衛生(メンタルヘルス)などについては、特に慎重な配慮が必要です。このような話題を取り扱う際には、専門家の意見を取り入れるか、適切な教育を受けた人物に監修してもらうことが有用です。
3. 危機管理の組織化
問題が発生した際には、迅速かつ効果的に対応するための対応チームが必要です。また、問題が発生した後の対応だけでなく、事前のリスク評価や予防策の検討も行うべきです。
まとめ
Bioréの事件は、広報における危機管理がどれほど重要であるかを示しています。特に、インフルエンサーマーケティングの増加とともに、これらの要素はさらに重要になってきています。企業としては、公開されるメッセージの内容を厳密に管理するだけでなく、危機が発生したときの対策を準備することが求められます。
敏感な問題に対する配慮と適切なガイドラインの設定、対応チームの組織化など、これらの対策を通じて、企業はブランドの評価を守り、信頼性を維持することができます。これらの事例と教訓を念頭に置き、インフルエンサーマーケティングの可能性を最大限に引き出しましょう。