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LUSHのインスタ停止から考える社会課題解決と企業成長を両立するコミュニケーション戦略

2021.11.28

今必要な危機管理広報

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香りのよい石鹸で有名なLUSH(ラッシュ)は、消費者のメンタルヘルスに与える「ソーシャルメディアの深刻な影響」に対する認識を高めるためにInstagram、Facebook、TikTok、Snapchatをユーザーにとって安全かどうか確認ができるまで、利用を一時的に停止することを決定しました。
同ブランドのプレスリリースによると、「ソーシャルメディアの深刻な影響についての懸念が、現在ほとんど無視されている」ためにこの決定を行ったと述べています。

顧客とのコミュニケーションにおいて、今や欠かせないツールとなったソーシャルメディア。今回はLUSHのコミュニケーション戦略から、どうすれば企業成長と社会課題解決を両立するコミュニケーションができるか考察します。

LUSHがソーシャルメディアを停止するまでに至った背景

イギリス発のLUSHは、ハンドメイド製品と倫理的なサプライチェーンを誇り、世界48か国で約900店舗を展開し、日本には75店舗あります。

これまでも同ブランドは覆面パトカーによる活動家の追跡や、ヒヨドリの絶滅防止など、社会的な問題に関連したキャンペーンを長年にわたって実施してきました。しかし2020年に、オーストラリアの工場での劣悪な労働環境と、システムの不備により10年近くにわたって、労働者に過少な報酬を支払っていたことで批判を受けます。

今回の停止について、共同パートナーのジャック・コンスタンティン氏は、「開発者として、人々がスイッチを切り、リラックスし、自分のウェルビーイングに注意を払えるような製品を作ることに全力を注いでいます」「ソーシャルメディアのプラットフォームは、人々がスクロールし続けるように設計されたアルゴリズムによって、スイッチオフしてリラックスするのを妨げるという、この目的に対するアンチテーゼとなっています」と取材に答えています。当面は、運営会社が問題のあるアカウントを凍結するなどの対応をしているTwitterとYouTubeでの活動を継続する予定です。

実はLUSHがソーシャルメディアを停止したのは初めてではなく、2019年に発表したのに続いて今回が2度目となります。InstagramとFacebookへの投稿を中止しましたが、その後「最善の意図にもかかわらず」これらのプラットフォームに「戻ってきてしまった」としています。

国内外を問わず、社会課題への問題提起や、危機管理コミュニケーションにおいてを優良なコミュニケーション施策を迅速に行える企業の多くは、過去にトラブルに見舞われたり、顧客から批判を受けている経験をしています。その経験をもとに危機に対して意識や実践的な対応する力がつき、強力なベストプラクティスに繋がるからです。LUSHも一貫した企業理念に加え、ESG活動の高まりや過去のサプライチェーンにおける労働環境の批判を受けた経験などが、さまざまなコミュニケーション戦略の強化につながっていると考えられます。

ソーシャルメディアはどれだけ有害か?

LUSHの今回の動きは、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が9月に発表した「Facebookファイル」で、Instagramが多くの若者にとって「有害」な場所であることを知っていたことが示唆されたことによるものです。WSJが入手した内部資料によると、同プラットフォームが調査した10代の女の子の32%が、自分の体について悪いと感じたときに、Instagramによってさらに悪い気分にさせられたと答えています。

Facebookを巡っては今年10月、元社員が「子供に悪影響を与えているのに必要な対策を取っていない」とアメリカ議会で訴えるなどしていて、企業体質に批判が集まっています。
フェイスブックの元プロダクトマネージャーであるハウゲン氏は、自社のプラットフォームが引き起こす可能性のある損害を公に認めていないことに不満を感じ、何万もの社内文書をリークしました。ハウゲン氏は、Facebookが企業の収益に影響を与える可能性があるため、アルゴリズムの変更を嫌がっていると主張しました。「フェイスブックは、アルゴリズムをより安全なものに変更すれば、人々がサイトに滞在する時間が短くなり、広告をクリックする回数が減り、収益が減ることに気づいたのです」と述べています。

ソーシャルメディアの停止は簡単じゃない

Facebookが有害なコンテンツと企業が訴えたのは、今回が初めてではありません。昨年は、Adidas、Unilever、米国の通信事業者Verizonなどの企業が、Facebookへの広告支出を1カ月間停止するというボイコットが行われました。5月には、世界的なコーヒーチェーン店であるスターバックスが、Facebookページ上の憎悪に満ちたコメントの管理に苦慮していることを理由に、Facebookを完全に辞めることを検討したと報じられました。

しかし、巨大ソーシャルメディアを批判するために企業は対策を講じてきましたが、それらが長続きすることはほとんどありませんでした。2020年7月の広告ボイコットに参加した企業の多くは、Facebookでの製品マーケティングに復帰し、スターバックスはメタのソーシャルメディア・プラットフォームで積極的な活動を続けています。

コミュニケーション戦略における攻めと守りのバランスはどう取ればいいか?

今後日本国内で同じようなコミュニケーション戦略は広がるでしょうか?
実際は、社会課題に対するコミュニケーション戦略の施策は、多くの企業が具体的に何をしたらいいか、何をすべきか確認が持てずにいます。上場企業であれば取締役会の抵抗に遭うケースも少なくありません。

これまで往々にして、日本ではいろいろな企業が海外の先進的なビジネスモデルやマーケティングのフレームワークなどを真似て展開してきました。
しかしビジネスパーソンなら一度は聞いたことがある”日本は海外と比べて◯◯年遅れている”という現象は情報伝達のスピードにより、短縮し続けています。

一方でコミュニケーション戦略の施策においては、大きく遅れをとっています。投資家をはじめとするステークホルダーから、ESG(環境・社会・ガバナンス)に対する関心は年々高まっていますが、実行のために短期的コストが発生する可能性がある施策は、利益との両立がむずかしいと感じ、短期的な価値創造を重視する企業では実践に至りません。

逆に、海外から遅れをとっている強みとして、今回のLUSHの様な事例から、日本国内におけるコミュニケーション戦略のトレンドを読み取れるといえます。例えば今回の事例からは、ソーシャルメディアにおいては、それぞれのプラットフォームが新たなガイドラインなどの導入、ユーザーを保護するための新しい法律が制定されいく流れになると考えられます。
また、企業は投資をうける場合だけではなく、収益や評判を左右する要素としても、ESGリスクの把握と共にコミュニケーション施策が戦略に位置づけられていく潮流は強まっていくと考察できます。

守りのコミュニケーション戦略の施策は、長期的視点がなければ実現しません。ESG活動をいかに競争優位に繋げられるか、短期的な利益と中長期的な投資戦略に対する考え方のバランスをとれるかどうかが、今後明暗を分けると考えられます。

レイザーは、ESG課題への取り組みを分かりやすくステークホルダーに発信するなどの「攻める」コミュニケーション戦略と、SNS炎上対策や広告物のリスク評価などの「守る」レピュテーションリスク管理の両軸からお客様をサポートします。

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